テクノネットレポート
セミコンジャパン2004 から
半導体以外のマイクロ/ナノ加工を見る
半導体の製造技術,材料などの総合展示会,セミコンジャパン2004は2004年12月1日〜3日,「イノベーションへの挑戦,新たなフロンティアスピリッツ」をテーマとして,千葉市・幕張メッセ(日本コンベンションセンター)で開催された。今年で28回目になるが,参加26カ国,出典社数1,610社,小間数4,134は昨年を上回り,3日間の参加者数も昨年を約3千人上回る108,410人であった。
展示は,半導体製造の前工程と後工程に分かれ,関連装置や設備,部品及び材料が紹介された。SEMI特別展示コーナーでは半導体産業にとって将来の市場として期待される医療・介護・バイオ関連分野とのかかわりに関する新しい技術が紹介された。
半導体の技術は,半導体にとどまらずナノテクノロジーと深く関係している。セミコンジャパンでは特別にMEMS/NEMSパビリオンが設置され,最先端の微細加工やマイクロシステムの展示が行われ,関心を呼んだ。
ここではMEMS/NEMSパビリオンの主要展示内容,SEMI展示特別コーナーから最近話題のミクロからナノ加工に関する注目技術を紹介することとしたい。
<MEMS/NEMSパビリオン>から
半導体の製造はシリコン基板上で行われるが,ナノテクという言葉が出てくる前から,ナノレベルでの加工技術が行われていた。マイクロからナノのレベルでの加工技術は,新しい産業を開くものと期待されているが,この分野では,産学の連携が重要であり,学の側からのシーズと,産のニーズがどのように結びつくか興味深い。MEMS/NEMSパビリオンは,そういった場として設けられたもので,狭いスペースではあるが,参加者の関心は高かった。以下にはいくつかの注目展示をとりあげる。
●東洋合成工業
UV-ナノインプリント材料を紹介。UV-NILプロセスといい,プレス工法を用いてナノサイズの微細な凹凸のあるモールド(型,原盤)から光硬化性樹脂へパターン転写を行う方法。
UV-NILプロセス
通常の光リソグラフィーと異なり,熱(乾燥等)工程,現像工程が必要なく,工程の簡略化が可能なため,低コストな加工プロセス構築が可能となる。半導体加工,光学部品,バイオチップなどへの応用展開が可能であり,新しい用途展開が期待されている。
また,バイオセンサーやバイオチップなどの固定化に有用な材料として,光架橋性PVAも展示。これは適度な感光性を有し,感光液の希釈や現像が水だけで可能であり,有機溶媒を嫌うバイオ関連用途に適する。
http://www.toyogosei.co.jp/product/ マイクロ研究グループ 坂井
sakai@toyogosei.co.jp TEL 0476-98-3366
●NTTアドバンステクノロジ
様々なマイクロマシン加工技術,マイクロ加工材料を紹介。ナノインプリント用モールドとして,石英,SiC,Si,Taなど各種材料によるものを展示。また,微細加工による電気化学用センサチップの作成サービスなど,ナノ,ミクロレベルの様々の用途展開を紹介した。光通信用微細加工が,様々の領域に広がりを見せているところが興味深い。
http://www.keytech.ntt-at.co.jp
●協同インターナショナル
3次元マイクロパターン加工を紹介。グレーマスクを使用して作成したマイクロレンズアレイなどを展示。その他,1台でコーティングから,洗浄,エッチングなど様々なプロセスに対応可能なマルチスピンプロセッサーなど,この分野のR&Dに最適な装置などを紹介。
●化薬マイクロケム
化薬マイクロケムは,マイクロマシン製造用のフォトレジスト材料事業育成のため、平成14年12月1,日本化薬、MicroChemCorp.(米)の共同出資で設立された。日本化薬が得意とする半導体封止材用エポキシ樹脂技術とMicroChemCorp.がもつレジスト材料技術の知的資産の融合により、新しいマイクロマシン技術市場など、最先端市場への積極的な展開を図っている。
MEMS用超厚膜化学増幅型ネガ型レジストなどを紹介。
化薬マイクロケム株式会社
東京都千代田区富士見1丁目11-2 〒102-8172
(東京富士見ビル)
TEL: 03-3237-5454
FAX: 03-3237-5455
担当: 山本
E-mail: tetsuya.yamamoto@nipponkayaku.co.jp
また,SEMI APPLICATIN
SHOWCASEと題して,実用化が進んでいるMEMS関連の製品の紹介も行われた。なかでも注目を集めたのが,超小型部品の射出成形機である。樹研工業が紹介したもので,超微細部品の成形実演を行った。ミリ以下の時計のムーブメントなどの部品はすでに実際に製品となっているが,さらに微細なものでは用途の問題,肝心の製品よりスプルー,ランナーなどの方が大きくなるなど,難しい面もあるという。
樹脂の成形でこのような微細加工ができるということは,装置,金型などではさらに微細な加工を行っていることを意味しており,興味深い。
<大学,研究機関>
参加大学・研究機関の主要研究を一覧表で示す。3次元マイクロ加工に様々の手法が研究されていることがわかる。
大学 |
テーマ |
ホームページ |
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兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所 |
放射光を用いた3次元マイクロ加工となの微細構造形成 新しい電気的,化学的能動/受動素子の実現と素子化 自由度の大きいマイクロメカニカルデバイス バイオ,化学,医療応用マイクロシステム 光,情報産業応用マイクロデバイス,システム |
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立命館大学 マイクロシステム技術研究センター |
マイクロファブリケーション技術 ●バルクマイクロマシニング,サーフェスマイクロマシニング,LIGAプロセスに加え,さらに物理化学現象を利用した新規三次元加工プロセス技術など。 ●マイクロマシニングとVLSIプロセスを融合した集積化技術の研究を。 デバイスデザイン技術 ●機械量(圧力・加速度など)や,光・磁気を中心にした物理センサ,および静電型,圧電型,電熱型などのアクチュエータの検出原理から掘り下げた新規デバイスの開発。 ●センサ,アクチュエータ,マイクロリアクターなどの機能デバイス,処理回路を同一基板上に一体集積した光集積システム,化学分析システム(μ−TAS) マイクロシステム技術 マイクロ機能材料・評価技術 |
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/micro/ |
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京都大学大学院工学研究科 |
ナノシステム構築のための統合工学 マイクロ・ナノ加工技術 薄膜材料の評価・解析技術 マイクロ・ナノシステム創製技術
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http://mech-server.mech.kyoto-u.ac.jp/lab/tabata/ |
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埼玉大学大学院理工学研究科 |
●超精密研削技術 ●レーザーマイクロ加工 3次元穴あけ加工法 3次元マイクロ割断法 金ナノ粒子を利用したレーザーカラーマーキング ●レーザートラッピング 気中3次元微小構造物組み立て法 |
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東京工業大学 黒澤研究室 |
●弾性表面波モータ 駆動周波数約10MHz、わずか20nm程度の機械振動で、1m/sec以上の移動速度をもつマイクロリニアモータ。 PZT薄膜とマイクロアクチュエータ/センサ 水熱合成法によるPZT薄膜材料の成膜プロセスの研究と共に、新しいマイクロデバイス。これまでにマイクロモータを試作し良好な動作特性を実証した。 ●マイクロ霧化デバイスと流体のハンドリング 弾性表面波素子を用いた霧化デバイスの研究。駆動周波数約50MHzの弾性表面波素子により、数ミクロンの粒径を持つドライフォッグの生成が可能。素子寸法は4x8x0.6mmと微小。 |
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東京工業大学 精密工学研究所 |
3次元マイクロデバイス創成用コンパクトナノ加工機 MEMSデバイス用微笑材料の機械的評価 ECFマイクロアクチュエータ MRFを用いたマイクロ流体制御技術 薄膜金属ガラスを用いた新しいマイクロアクチュエータ シリコン電極による超薄型燃料電池 |
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東京大学 先端メカトロニクス研究室 |
各種アクチュエータ・センサの開発や,非接触浮上技術,超精密加工技術などといった,メカトロニクス要素技術に関する研究を行うとともに,その応用としてのバイオメカトロニクスシステムやヒューマンインタフェースデバイスの開発等に取り組んでいる. マイクロチャンネルにおける液中微小液滴の生成 液中微小液滴の静電搬送によるマイクロ化学リアクタ,他 |
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東北大学 江刺・小野・田中研究室 |
MEMSプロセスの新展開 小型でも高度な働きをする機械の実現をめざして、センサや処理回路、さらにはアクチュエータをも集積化したマイクロマシンを実際に作ることを行っている。 末端の対象近くに高度なインテリジェンスを持つ高次なシステム、小さな対象を器用に扱ったり狭いところで作業するマイクロマシン、多数のセンサやアクチュエータが協調し優しく働くシステムなどを目指している。 |
http://www.mems.mech.tohoku.ac.jp/ |
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名古屋大学 佐藤研究室 |
情報機器,産業機器,医療,科学研究などの分野で応用が期待されているマイクロマシンを実現するため,シリコンの微細加工技術,材料の計測評価技術,マイクロシステム技術に関する以下の研究を推進しています. 結晶異方性エッチング ミクロンサイズの材料の引張・衝撃・疲労試験 マイクロマシンの加工プロセス,デバイス機能の解析 マイクロセンサ・マイクロアクチュエータなど応用デバイスの開発 イオンビ−ムを利用した超硬質材料・超潤滑材料の開発 ナノインデンテーション法による薄膜の機械的性質の評価 |
http://www.kaz.mech.nagoya-u.ac.jp/ |
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日本女子大 小舘研究室 |
光学は現代科学の一分野として発展を続けています。21世紀のマルチメディア社会において、情報媒体として光の特性をいかし、レーザ光やファイバ技術を基本とする全光化システムに向けての研究開発が進められています。本研究室では回折光学素子に関する基礎研究をもとに、光エレクトロニクス分野への応用研究を行っています。 |
SEMI特別展示コーナー
SEMIが企画した特別展示コーナーでは,将来の市場の成長が期待されている医療・介護・バイオ分野に焦点を当てた展示と,産業の振興が目覚しいBRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)の経済に関する展示が各国の大使館の協力のもとに行われた。
筑波大学サイバニクス研究所は,「ロボットスーツHAL」を出展した。サイバニクスとは人間,機械,情報系の融合複合新領域をいう。HALは,自立的制御,随意的制御が実装されたパワーアシスト型ロボットスーツで,思い通りに動作して筋力を増幅したり,動かすことのできなかった体を動かすことができる。医療,福祉,介護支援をはじめ,重作業支援,災害レスキュー活動支援などへの適用が見込まれている。
神奈川工科大学福祉システム工学科山本研究室は,「介護用パワーアシストスーツ」の出展を行った。このスーツは,マイクロコンピュータ搭載の制御回路,筋肉発揮力センサ,エアバック式アクチュエータ,マイクロエアポンプなどで構成されている。体重60kgの人を体重30kgの人を持ち上げるような感覚で持ち上げることができるという。
また,大きな注目を集めたものに,マイクロ内視鏡がある。